Media Defenderの行っているフェイクビデオサイト、本当の狙い

先日、とあるブログからトラックバックを受けた。当ブログと同様の視点でMedia Defenderのフェイクビデオ共有サイトを批判するような内容であったのだけれども、ちょっと勘違いというか、行き過ぎた表現があるので、それについて指摘するよ、というお話。本当はコメントしたかったんだけど、コメントが投稿できないみたいなので、トラバで指摘させてくださいな。ということで、今回はらばQへの私信に近い感じです。

Media Defenderのフェイクビデオ共有サイト問題についてらばQでは、

Media Defenderはmiivi.comという動画ダウンロードサービスを立ち上げ、わざわざそこに著作権のあるファイルを置いておき、ダウンロードした人を逮捕しようとしたようです。さらにそのファイルにはスパイウェアめいた機能まであったとか。

おとり捜査ってレベルじゃねーぞ

むしろマッチポンプそのものですね。

と、紹介しているのだけれども、実際にはMedia Defenderは、著作権で保護されたファイルを保持してはいないと思われる*1。この辺は、私のエントリでもちょっと曖昧に書かれているので、誤解を招きかねない部分もある。当ブログのエントリでは、

Miiviは、「300」のような超大作映画の高速なダウンロードを謳っている。そうして、人々が著作権で保護されたコンテンツをダウンロードするよう誘い込む。

TorrentFreakの記事を訳しているのだけれども、ともすれば、Miiviに著作権で保護されたコンテンツが存在し、それをダウンロードさせるよう誘い込んでいるようにも思えちゃうけど、実際にはフェイクトラッカーのときと同じように、コンテンツを保持することなく、フェイクファイル(著作物ではない空ファイル)をダウンロードさせ*1、そのIPを収集するという手法をとっているのだと思われる。もし、このIP収集が、BayTSPの行ってきたようなフェイクTorrent的手法を踏襲するのであれば、違法ダウンロード(実際にそれは違法ではない)を行っているユーザであるとして、ISPに警告状を送付するという手段で、ユーザの行動を抑制する(1回目は警告、2回目はサービスの停止、というISPも存在するらしい)ことになるのかもしれない。

ただ、BitTorrentに関しては、その特性上ダウンロードとアップロードが同時に行われる、ということをもって、アップロードを含意したダウンロードである、と正当化していたのだと思う(もちろん、著作物ではないフェイクファイルなのだから、実際には違法でもなんでもないのだが)。そう考えると、いかにビデオ共有サイトから「権利者の許諾なくアップロードされているビデオ」をダウンロードしたとしても、それ自体はアップロードを含むものではないために、その責任を問うことは難しい。また、これまで著作権団体がユーザに対して行ってきたのは、主に民事訴訟であることを考えても、逮捕という刑事的な手続きに発展するとは考えがたい。

まぁ、これまでフェイクファイルのダウンロードを持って、著作権侵害ユーザだとISPに通告していた輩と同類だと考えると、このダウンロードしようとしたことをもって、著作権侵害ユーザだとISPに通告することも考えられなくもない(いかに手法が誤っていても、また証拠として全く根拠のないものであっても、ISPがそれを鵜呑みにすることで、効果はある)。

ダウンロードに関しては、馬鹿馬鹿しい手法だ、で済むのだけれども、一方、今回の件で懸念されるのは、アップロードに関して。これについては、明確な証拠を握られてしまうことになる。IPアドレスと、著作権で保護されたコンテンツをアップロードしたという明確な証拠を掴まれてしまう。その意味では、民事訴訟は確実にありうるし、刑事的な手続きを取られることもありうる。その意味で、TorrentFreakは逮捕の可能性についても言及しているのかと。

ってことで、今回の突っ込みとしては、ダウンロードによって逮捕や訴訟への発展というのは考えがたい。ということで、そこまでいってしまうのはミスリードかと。

ただ、こういう海外のP2P事情をレポートしてくれるブログやサイトが増えていくのは、非常に嬉しい。これからもどうぞよろしくね、らばQさん。

追記
*1 この問題について、いろいろ調べているのだけれども、もしかしたら、Miivi上に著作権で保護されたコンテンツがホストされていたのかも・・・という疑問も生じてきた。今回のこの件については、The Pirate BayやTorrentFreakに並んで、ZeroPaidがキープレイヤーとして登場しているのだけれども、そのZeroPaidの記事のスクリーンショットをみると、Miivi上のビデオプレイヤーにバットマンリターンズが表示されている。ということは、実際に視聴可能だった、ということだろうか・・・。これについての続報も各所でアップされているので、そちらも追ってみたい。

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