WinMXとかWinnyとか、日本ではろくな扱いを受けていないP2Pですが、海外ではけっこう真面目に議論されてるんですよというブログ。
以前の記事で、The Pirate Bayの管理人brokepが、TorrentSpyを批判していた中で語られていた、「ヒドラになれ」という言葉を、TorrentFreakがより深く考察しているよ、というお話。現在、The Pirate BayがパブリックTorrentの約50%を保持している状況は、BitTorrentコミュニティとして不安定な状況にあるとして、より多くの場所にリソースは拡散されるべきだ、と主張している。つまり、たくさんの頭を持つヒドラとなれ、ということ。これはThe Pirate Bayなど一部の大手トラッカーが、著作権団体や当局によって閉鎖させられるという自体になったときに、失われるリソースがあまりに膨大なものになる、という危惧に起因する。
原典:TorrentFreak
原題:BitTorrent Survival: The Way of the Hydra
著者:enigmax
日付:June 28, 2007
URL:http://torrentfreak.com/bittorrent-survival-the-way-of-the-hydra/
より多くの人がBitTorrentのことを耳にするのにつれて、日々、より多くの訪問者、メンバー、seeder、peerを得て、大手Torrentサイトは大きくなっている。このP2Pメインストリームの認識は、新たな潮流を生み出している。しかし、著作権や法の執行機関によって、そのうちのいくつかのサイトは、生き残りのための戦術に頭を悩ませている。
BitTorrentコミュニティは、ものすごい速度で成長を続けている。その人気はとどまることを知らず、以前にも増して、多くの人々がその驚きを発見している。Suprnovaは、世界中の数百万人もの人達のイマジネーションを捕らえた。これは、このファイル共有現象に巨大な流れを作り出した。それが終わりを迎える前には、1日に数百万のアクセスを誇った。
現在、mininovaやThe Pirate Bayといったサイトは、これまでに比類ないくらいのレベルにある。mininovaは、始めの2年間で10億torrentを達成し、さらにそのたった6ヵ月後には20億ダウンロードを達成した。これは、全盛期のSuprnovaの1日のトラフィックのおよそ倍である。
The Pirate Bayに関して、そのサイズと、それに比例した悪名の説明は必要ないだろう。莫大なユーザを集め、日に400万torrentがダウンロードされる、驚愕のBitTorrentベヒーモスである。毎秒86回の検索と1150のリクエストを処理する。そして、全世界のtorrentの約50%を一手に引き受けてもいる。
それは、全パブリックtorrentの50%である。それはさまざまな攻撃を引き付けるだけの数字である。
しばしば、当局が彼らの勝利をヘッドラインで声高に叫ぶのを目にしていると思うが、LokiTorrentやElite Torrentsのようなサイトには勝ち目がなかった。それは米国のベースをおいていたということに起因するだろう。大規模BitTorrentサイトの管理人はこれを承知しているので、主に彼らの活動を、現在のところ安全地帯と思われるオランダに移している。そのため、オランダの状況というのは特に懸念されている-オランダには、戦略的に重要なTorrentサイトが数多く存在する。
では、解決方法はあるのだろうか?The Pirate BayのBrokepは以下のように考えている。これには私も完全に同意する。
「現在、(torrent)サイトとトラッカーはあまりに少ない。ほとんどのものが大手のサイトに集中してしまっている。」
The Pirate BayやMininova、TorrentSpyのような可視的なビッグ『ブランド』がメインストリームとして存在する状況があるが、BitTorrentコミュニティがそのような「上が重い(top heavy)」構造を持つことは不安定な状況であるといえる。確かに、『複数の頭を持つヒドラ』であることは良いことだ。しかし、その頭の1つがパブリックtorrentの50%を占めるのであれば、それはよいこととはいえない。この状況はもっと考えられなければいけない。リソースは、2,3の「ビッグボム(訳注:著作権団体の攻勢などのこと)」でその基盤の主要な部位を解体されないようなやり方で、拡散される必要がある。
brokepがいうように、これには解決方法がある。「私は、小さく、そして専門的なサイトが好きだ、そのようなサイトがより多くできることを望んでいる。そのようなサイトを立ち上げるのを私は手助けしたい、しかし、既にサイトを運営している我々がそのようなサイトを立ち上げるべきではない。」
彼は正しい。The Pirate Bayのようなサイトが、BitTorrentコミュニティが望むものを提供すればするほど、人々が自らのサイトを構築し、運営するだけの冒険をすることはなくなるだろう。現在の状況は、ヒドラが数千のリソースに飢えた頭を必要としているというところだろう。ターゲットとされるのは、1ダースのジューシーで太った既存のサイトだけであってはならない。当局は、まさにほんのわずかな変化や法の解釈を待っているのである。スウェーデンもオランダも、変化は不可避なのだ。
TorrentFreakは、20,000人のメンバーを抱えているにもかかわらず、米国ベースでのTorrentサイトの運営を続けている管理人に、その存続の理由を尋ねてみた。「人々は、MPAAやRIAAのコンテンツに夢中になりすぎていいます。それら以外にも、あなたが追跡するだけの価値があり、そしてあなたを煩わすことのない巨大なライブラリが存在します。私たちは4000以上のtorrentを保持していますが、非公式な削除要請はこの2年間で2,3程度のものでした。もし、トラッカーを始めたいのであれば、非RIAA/MPAAのコンテンツをインデックスし、何か他のものを専門とすることが、コミュニティを作り出すための良い方法でしょう。たとえ、あなたがそれをアメリカで干すとするとしても。」
brokepはこうも述べている。非常に賢明な言葉だ。
「皆さんへの公式なメッセージとして-あなた自身のTorrentサイトをスタートさせ、インターネットをヒドラにすること、それが必要なのだ。数百ものサイトがあれば、それら全てがシャットダウンされるということはない。そう、彼らが今日あるわずかなサイトを閉鎖させたとしても、数百のサイトが登場することだろう、私は確信している。単にそのような言葉を広めるのは簡単だ、でも実際にそれを始めなければいけないのだ。 」
まぁ、わからないでもないけれど、結局は著作権侵害への攻勢に対する予防策といった感じもしないではない。その点では、より海賊行為を巧妙化すべきだという主張にも取れなくはない。
とはいえ、確かにThe Pirate Bayがシャットダウンさせられた場合、パブリックTorrentの半数を失うことになるのは事実だろう。その中には、合法的なものも含まれるわけで、それが失われることは大きな損失といえる。BitTorrentはWinnyと異なり、コンテンツの流通に関してはSwarm単位でのネットワークが形成されるため、いかにThe Pirate Bayを利用した配布であっても、コンテンツ自体が合法的なものであれば決して違法なやり取りとは関係しない。そう考えるとThe Pirate Bayが失われることは不利益であるともいえる。
ただ、そのような大規模トラッカーにのみ依存するというのは危険だ、というのは理解できる。確かに上記のような利用にThe Pirate Bayを使っても問題はないのだが、The Pirate Bayの状況を考えると、それほどベターな利用方法ではないかもしれない。その点で、より複数の選択肢が登場することは望ましいのかもしれない。それがたくさんの頭を持つヒドラ、ということではないのかもしれないけどね。
さてさて、このエントリには複数のコメントがつけられていたり、Diggなどでも議論されている。その中にはenigmaxの主張に懐疑的なものも多い。たとえば、The Pirate Bayが閉鎖されても、新たな存在がそれに取って代わるだろう(The Pirate BayやmininovaがSuprnovaに取って代わったように)、とか、そうでなくてもコンテンツを所持している奴が別のトラッカーにtorrentに上げ直すだけじゃない?とか。また一方で、その議論を認めつつも、人々がトラッカーを開始するのは、そんなにハードルの低いものじゃないとかね。それに関しては、WordpressやDrupalライクな簡単なトラッカーアプリを提供する"Project HYDRA"を今夏スタートさせるぜ!という書き込みもあって、(これが本当なら)期待したいところ。
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