WinMXとかWinnyとか、日本ではろくな扱いを受けていないP2Pですが、海外ではけっこう真面目に議論されてるんですよというブログ。
以下の文章は、TorrentFreakの「Music Biz Wants To Swap ISP Disconnections For Cash Fines」という記事を翻訳したものである。
原典:TorrentFreak
原題:Music Biz Wants To Swap ISP Disconnections For Cash Fines
著者:Ernesto
日付:January 28, 2013
ライセンス:CC BY
エンターテイメント産業は長きに渡り、タダで音楽や映画をダウンロードするような道を踏み外したインターネットユーザへの対策として、いわゆる「スリーストライク」を導入するよう多大なる努力を払ってきた。そして、人々が悪事に手を染めないためには、最終的にインターネットの切断という罰を科すべきだと主張されてきた。しかし、段階的レスポンスの創始国であるフランスの音楽産業は今、切断を捨て罰金を支持しているようである。
この10年間、世界のエンターテイメント企業は、違法ファイル共有の問題と戦ってきた。彼らはそれを阻止するため、サイトを閉鎖し、人々を法廷に引きずり出し、ロビー活動をし、脅し――というように、ありとあらゆることを試みた。
しかし、いずれのアプローチを用いても、彼らが最終的な目標を達成することはできなかった。その事実を理解してか、最近、権利者たちは「教育的」アプローチのもたらす結果について考え始めた。こうした考え方は、さまざまな「ストライク」レジームへと発展していった。基本的には、消費者が自らの行動を変えるよう、常に監視を続けるというものである。
音楽産業はすぐさま目を向けた。人々は二、三度の警告によって正しい方向に導かれなければならないが、その説得に応じなければ、最終的に何かしらの罰が科されることが必要だ、と。
5年以上を費やしたロビー活動の末、この最終的な罰はフランスのHadopiスキームの中に組み込まれた。しかし、100万以上の警告を発しているにもかかわらず、インターネット接続を切断されることはなかった。批判の多い手段であることや実施することで問題が生じる可能性があることに加え、昨夏オレリー・フィリペティ文化相がアカウント停止措置について「最終目標に対して不相応な罰だ」と述べてもいる。
したがって、現在フランスではこの切断のオプションはほぼ死んだといえるだろう。では、それに代わるものはなんだろうか? おそらく、金を奪うこと、だ。
Midemで聞こえてきた発言は、フランス音楽産業が現在、罰金システムの導入に重きを置いていることを示唆している。
UPFI(Union of Independent Phonographic Producers)は、切断レジームの代わりに警告と140ユーロの罰金にすべきだとする仏音楽権利団体SACEMの意見に同意すると発言している。
PCInpactはUPFI事務局長のジェローム・ロジャーとコンタクトをとり、同団体がそうした罰金に賛成していることを確認した。
こうした罰金を好む傾向は、ワーナー・ミュージック社長のティエリー・シャサーニュによっても支持されている。シャサーニュの最近の発言は、Hadopiの下では違反者に十分な罰が与えられていない、抑止力が必要だということを示唆している。
「抑止力が不十分です。この部分については失敗といえるでしょう」とシャサーニュは言う。「私たちがダウンロード違法だと考えるのであれば、それは罰せられなければならない。何も目新しいことではないでしょう。私は罰金システムが妥当だと思いますよ。」
米国で近日中に開始することが予定されている「シックスストライク」スキームには、切断のオプションは含まれていない。しかし、一部のISPの利用規約には、加入者の著作権侵害があった場合に契約の解除を可能とする条項がある。
UPDATE:Nemuramaのエディタ、ギヨーム・シャンポーがこの問題に詳しい関係者から得た情報によると、法改正によってインターネットの切断から行政罰金(つまり、適法手続きの後に裁判所が判断するのではなく、当局によって自動的に判断されることを意味する)に変更されることはほぼ間違いないという。
ギヨームは「具体的にどのような法律にすべきかという議論は残っていますが、自動的罰金システムは、今のHadopiの権利保護委員会(Rights Protection Commitee)のような専属の行政機関が運用することになるようです。もしくは、テレビとラジオの行政機関である上級オーディオビジュアル審議会(Superior Audiovisual Concil)のようなかたちかもしれない。新しい法律は2013年前半に議会で討論されるとのことです」とTorrentFreakに話してくれた。
個人的には、ネット切断よりもはるかにマシな選択肢だと思う。ただ、適法手続きを経ずに自動的に罰金を科すことになれば、先日の遠隔操作ウィルスによる犯行予告の誤認逮捕・冤罪事件に見られたように、不十分な証拠をもとに不当な行政罰が科される可能性は否定できない。おそらくは大量に網をかけることになるだろうから、そうしたリスクをどうやって軽減していくか、十分な議論が必要だろう。
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