WinMXとかWinnyとか、日本ではろくな扱いを受けていないP2Pですが、海外ではけっこう真面目に議論されてるんですよというブログ。
以下の文章は、TorrentFreakの「Court Kicks Out Copyright Troll Who Has "No Desire To Litigate"」という記事を翻訳したものである。
原典:TorrentFreak
原題:Court Kicks Out Copyright Troll Who Has "No Desire To Litigate"
著者:enigmax
日付:April 06, 2012
ライセンス:CC BY
ファイル共有ユーザに対する大規模訴訟において、カリフォルニア法廷は、著作権者の苦境に同情しつつも、法廷をBitTorrentユーザ特定のために利用することを認めないとした。判事は、著作権侵害を可能にするテクノロジーがそれを防止するテクノロジーに先行している状況を嘆かわしいとしたものの、法廷で争う意図はなく単に和解だけを目的としてユーザの特定を求める権利者には、協力できないと言う。
Hard Drive Productions, Inc.対Does 1-90は、有名なポルノ企業の原告が、今時のよくある著作権トロールのやり口を踏襲している事件である。
彼らはBitTorrentネットワークでIPアドレスを収集し、法廷において彼らの著作権を侵害しているとみられる人物の個人情報を得る。その情報からISP加入者にコンタクトを取り、(平均的には)2000ドルほどの和解金を要求し、支払われれば架空の訴訟を取り下げる。
この裁判で、Hard Driveは63日間の監視期間に「Amateur Allure - Natalia」をダウンロード・共有したとみられる90人のインターネット加入者の詳細について開示するようISPに求めている。
法廷は、「正当な理由」が示された場合においてのみ、裁判所命令でディスカバリが許可されるとした。「正当な理由」の審理原則は以下の4つの要件を満たす必要がある。
(1) 被告が連邦裁判所で提訴できる実際の人物ないし実体であることを裁判所が確定できるよう、原告は行方不明の当事者の十分な特性を特定することができること;
(2) 原告は、所在のつかめない被告を発見するために既にあらゆる措置を講じていること;
(3) 被告に対する現石の訴訟は、請求棄却の申し立てに耐えうるものであること;
(4) 原告は、召喚状の送達が可能であるなど、ディスカバリを通して被告を特定しうる合理的な見込みについて証明していること
しかし、ハワード・R・ロイド判事は、請求された初期のディスカバリが氏名不詳の被告の身元を「十中八九(very likely)」明らかにするかを考慮すると、問題があると考えた。
以前、Hard Driveは、ディスカバリによって著作権侵害を疑われるそれぞれのBitTorrentユーザを「完全に特定する」ことができると述べていた。しかしロイド判事は、ISPアカウント保持者が当該の著作権侵害者であるかもしれないが、著作権侵害者とは別の単に支払いをしているだけの人物かもしれない、と指摘した。つまり、当該のIPアドレスでアクセスした誰もが、実際の著作権侵害者でありえた。
それから法廷は、アカウント保持者がHard Driveの探している人物でないときに、誰が実際に侵害行為を行ったのかを突き止めるための二次的な「探索実行(fishing exercise)」手続きについて記した7つのリストについて言及した。これは法廷の手に余るものであった。
「原告の請求するディスカバリでは、氏名不詳の被告の身元を『十中八九』明らかにできないことは、極めて明白である。実際、原告のみならず他の原告も、初期のディスカバリが許可されたこれらの事件において、一人の被告も特定できなかったことを審理で認めている」とロイド判事は述べる。
また、「相当な理由」についても認められなかった。
原告は、この事件の氏名不詳の被告がカルフォルニア州在住であることを示す必要があった。しかしHard Drivは墓穴を掘った。IP位置情報ツールは「…IPアドレスが位置する国を予測する場合に限り、正しく信頼できる」と認めてしまったのだ。
これを確認するように、Hard Driveは、以前の訴訟においてディスカバリが許可された際、一部のISP加入者が訴訟の起こされた州には住んでいなかったことが判明したと認めた。
また、Hard Driveは、90人の氏名不詳の被告がBitTorrentを使って互いに映画を共有していたことを示す証拠を持たないことを認めており、法廷は90人の被告を1つの訴訟でまとめて扱うことに問題視した。
ロイド判事は、「原告は、同じスウォームに全く異なる時間に現れた被告らが、協力して著作権侵害を行った証拠を示してはいない。したがって、本法廷はこれを、90人の氏名不詳のの被告が関わる単一の取引、または緊密に関連した連続する取引とは認められず、共同訴訟としては不適当である。」と言う。
法廷は、Hard Driveによる氏名不詳の被告の特定を求める申立を却下し、一人の被告を除いて訴訟から切り離すよう命じた。Hard DriveがBitTorrentユーザ全員を特定したいのであれば、それぞれのユーザについて個々に訴訟を起こさなければならない。
いわゆる著作権トロールに反対する人々にとって、このロイズ判事の判断は非常に心強いものだろう。
「本法廷は、この決定が原告や他の著作権者を失望させるものであることは理解している。彼らが自らの作品のオンライン侵害を抑制したいと望むのも当然である。残念なことに、著作権侵害を可能にするテクノロジーは、それを防止するテクノロジーに先行しているように思える。」とロイド判事は言う。
「本法廷は、原告が明確な著作権侵害によって害されていると理解しており、また、このような訴訟が著作権侵害者を発見し、阻止する唯一の方法であるという主張には同情的である。しかしながら、本法廷は、実際に裁判で争う意志はなく、著作権侵害者と思しき人物(やISPの網にかかった無実の他者)に対する法廷外のビジネスプランを進めようとする原告に助力することはない。」
「原告は、侵害者またはそうでない者から『和解』金を引き出すという司法外の救済を目的として、訴訟におけるディスカバリ手続きを通して情報を得るために、法廷の助力を得ようとしている。これは本法廷の意図するところではない。」とロイド判事は結論づけた。
まとめると、
という理由から、ISPへのユーザ照会を却下したというところ。著作権トロールへの不信感があっての判断だと思われる。
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