著作権団体、ACTAの早期締結を求め欧州議会に裏工作

以下の文章は、TorrentFreakの「Leaked "ACTA" Lobby Letter Reveals Hollywood Pressure On EU」という記事を翻訳したものである。

原典:TorrentFreak
原題:Leaked "ACTA" Lobby Letter Reveals Hollywood Pressure On EU
著者:Ernesto
日付:May 06, 2011
ライセンス:CC BY

映画協会(Motion Picture Association)やIFPIをはじめとする21の著作権団体によって送付された書簡から、彼らが問題のアンチパイラシー条約ACTAに署名するよう、欧州議会にいかにして工作を仕掛けているのかを知ることができる。TorrentFreakは、密室でのロビイングに用いられていた書簡を手に入れた。この書簡によると、著作権団体は、欧州議会に欧州司法裁判所の判断を待つことなく「これ以上の遅れのないよう」署名することを求めている。

著作権ロビイが実質、ありとあらゆる政治的レベルで行われていることはよく知られている。彼らはロビイングを通じて、著作権法制が彼ら企業の望ましい方向に進むことを期待している。

MPA(A)やIFPI、BSAのような団体は、定期的にプレスリリースを公表しているが、この手のハードコアなロビイングの大半は秘密裏に行われている。本日、我々は、著作権ロビイ団体が秘密にしていた、ロビイング文書を公表することにした。

問題の書簡は、イエジ・ブゼック欧州議会議長に送られたもので、模造品・海賊版拡散防止条約(ACTA)に関するもの。ACTAの文面は昨年確定されたものの、EUは未だ同条約に調印してはいない。

欧州議会は、ACTAのもたらす影響をよく理解するため、他の欧州条約との整合性について欧州司法裁判所に意見を仰いでいる。

しかし、これは著作権ロビイ団体にとって面白くない状況のようだ。彼らは、一刻も早いACTAの調印を望んでいる。そこで彼らは、欧州議会が法的レビューをスキップし、他の問題点を検討することなく即座に条約に調印するよう書簡にしたためた。

「私たちはACTAを支持いたします。この条約が、欧州のイノベーティブ産業やクリエイティブ産業を不正競争から保護し、消費者を世界化する市場に置ける偽造品や海賊版から守るために重要であると考えております。」という出だしで、この書簡は始まる。

その後、形式的な挨拶を挟んで、すぐに核心に触れるメッセージへと移っていく。

「私たちは、新たな条約の下、知財権および貿易問題について欧州議会に与えられる権限を歓迎する一方で、ECJ(欧州司法裁判所)に判断を求める手続きに時間がかかり、ACTAの最終的な締結およびその実施に遅延が生じることを懸念しております。また、そのようなことになれば、世界的な知的財産権の効果的執行に関する提案、支持においても、国際的な貿易パートナーと比較して、欧州のリーダーとしての地位が弱まることを懸念してもおります。」と続く。

要するに、これら著作権団体は、欧州の国際的パートナー(米国、日本、豪州その他)が、もはや欧州を知的財産権執行のリーダーとは見なさなくなるので、欧州司法裁判所に法的レビューを求めることはEUを害することに繋がる、と主張しているわけだ。彼らはEUに対し、そのプロセスから司法裁判所を排除し、即座に署名するようアドバイスしている。

「欧州貿易協定における知財権規定の強力な執行をサポートするという欧州議会のシグナルがあるのでしたら、欧州議会が、これ以上の遅延なきよう、ACTAに調印することを期待しております。」と書簡は締められている。

もちろん、上記の書簡は、極めてあからさまな要求であるのだが、この文書にサインしている21の著作権団体は、これが市民にとって好ましくないものであることをよく理解しているようだ。いずれの団体も、この書簡について、彼らが頻繁に公表するプレスリリースでは明らかにしていない、または触れてさえいないのは、そのためだろう。特定のイメージを維持するためには、都合の悪いことは裏でコソコソやった方がいいということなのだろう。

TorrentFreakは、この書簡の全文を入手した(以下に埋め込まれたもの)。これは、今週初め、IPtegrityに投稿されたものの抜粋である。文書のメタデータによると、この書簡はいずれかのロビイ団体のによって書かれたものではなく、ロビイ企業Policy Actionのジョアン・スコビィによって書かれたものであった。

先日、PCWorldに「ACTA Text Hurts Startups, Goes Beyond EU Law, Says FFII」という記事が掲載されていたんだけど、その辺とも若干絡むお話。

PCWorldの記事では、これまで欧州委員会が再三、ACTAとEU法に矛盾はない、EU法を変える必要はないと説明してきたが、知財権侵害の損害額算出や商標の定義について、齟齬があるという批判の声が上がっていると伝えられている。

EU法における損害とは、「権利者が被った経済的損失」とされているのに、ACTAでは「市場価格または希望小売価格によって算出された、侵害製品ないしサービスの価値」とされている、全然違うだろJK、とか何とか。

こうしたEU法や指令との齟齬を突っつかれる前に、とっとと締結しろ、ということなのかしらね。

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