メキシコACTA会合で何が話し合われていたのか

以下の文章は、Michael Geist Blogの「What Really Happened At the ACTA Talks in Mexico?」という記事を翻訳したものである。

原典:Michael Geist Blog
原題:What Really Happened At the ACTA Talks in Mexico?
著者:Michal Geist
日付:February 02, 2010
ライセンス:CC BY

先週、メキシコのグアダラハラで開催されていた第7回ACTA会合が幕を閉じたが、参加国がリリースした紋切り型の声明は、相変わらず、単に協議された項目を繰り返すだけで、会合の進捗を示すものではなかった。声明は、更なる透明性を求める声に何ら応じたものではなかったが、ニュージーランドスウェーデンからの報道が、現在進展していることに明らかにしている。要点を以下に記そう。

  • (訳注:以前リークされた)インターネット・エンフォースメントについての米国提案は、衆目に晒されるところとなったが、依然としてデジタル・エンフォースメント、セーフ・ハーバー(仲介者責任)に関する3つの提案は、未だ検討されている。ニュージーランド代表者の1人は、現在4番目の提案を作成中であり、この章の確定には6ヶ月超を要すると報告した。
  • メキシコでの会合では、セーフハーバー規定に加え、迂回防止法(訳注:技術的保護手段の回避を禁ずる法律)などのDMCAスタイルの規定についての議論された。
  • 欧州は、著作権、商標だけではなく、特許も加えるようACTAの範囲拡張を引き続き要求した。
  • 一部の国は、不透明性への批判に応え、ACTA文書の共有によりオープンになっているが、他の国々は依然、議論を引き続き秘匿するという姿勢を崩していない。ニュージーランド、スウェーデン両国は、可能な限り透明性を維持することを公表している。

ちなみに、日本はというと、経産省が公表したメキシコでのACTA会合概要を見る限り、自主的な透明性確保の努力をするつもりはない、ということなのだろう。「関係国は、広く意見を聞く機会を設けることが重要であるとの共通認識のもと、各国でそのような機会を設け、共同で交渉全体の透明性を高めていく努力をしていくことを確認」したというわりには、肝心の会合の内容は「デジタル環境における知的財産権の執行、民事手続、国境措置について有意義な議論を行いました」と言うだけに留まっている。

閑話休題。メキシコでの会合で議論にあがったセーフハーバー規定というのは、オンラインサービスプロバイダの責任の範囲、言い換えれば義務を定めるもの。そこに定められていることに従っていれば、加入者の侵害行為に対してISPが責任を負うことはない、という感じで。ただ、ACTAの文脈でこれが問題になるのは、たとえばスリーストライクスキームに即してISPの責任の範囲が規定されかねないため。ISPが免責されるためのハードルを遙かにあげるためにも利用されかねないのである。

でもう1つは、迂回防止。簡単に言ってしまえば、我々が許されている私的複製であっても、技術的保護手段を用いることで、私的複製を違法行為にしてしまう、ということ。私的複製は違法ではないにしても、そうするためには技術的保護手段を回避しなければならない、という状況を作り出せば、私的複製を制限することができてしまう。DVDやBlu-rayのバックアップやポータブルデバイスで利用するためのフォーマット変換すらできなくなる可能性もある。さらに技術的保護手段の回避のための情報、技術の提供も違法行為となるかもしれない。

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