WinMXとかWinnyとか、日本ではろくな扱いを受けていないP2Pですが、海外ではけっこう真面目に議論されてるんですよというブログ。
以下の文章は、TorrentFreakの「3-Strikes For Pirates Makes European Comeback Tour」という記事を翻訳したものである。
原典:TorrentFreak
原題:3-Strikes For Pirates Makes European Comeback Tour
著者:Ben Jones
日付:October 23, 2009
ライセンス:CC
by-sa
消費者への攻撃はあらゆる場所でその強度を増している。欧州理事会やフランス憲法院がそれぞれの国のスリーストライク法案を推し進めているため、その実現の見込みが舞い戻ってきたことになる。HADOPIは息を吹き返し、 EUは司法による監視の要件をずたずたにしようとしている。
スリーストライクベースの法案は、英国で強硬な反対にあった以外にも、各地で同様の反発を招いており、その驚異はここしばらく減少していた。
しかし、そうした反対運動は、ロビー団体や政治家たちがこうしたルールを推し進めんとすることを止めることはできなかった。
欧州議会では、いかなる制裁(インターネットアクセスの切断など)であれ、それが科される前に適切な司法手続きを求めるというスリーストライク法に対抗する改正案によって、スリーストライクの効力は大幅に減じられた。一方フランスでは、憲法院がわずかに修正されたHADOPI(スリーストライク的制裁を含むフランスの法案)を支持する判断を下した。
火曜、議会は、2度議会にかけられ、2度とも過半数の投票を得たはずのAmendment 138を断念した。この法案は、産業団体から告発されると同時に有罪となり、それに基づいて罰が加えられるという驚異から、市民の権利を守るものであった。その条文にはこうある。
欧州連合基本権憲章第11条にある表現および情報の自由に従い、司法機関による事前の判断によらず、エンドユーザの基本的権利および自由を抑圧する規制はあってはならないという原則の適用が、事後的な判断が下されることによる脅威から市民の安全を保護する。
それどころか、彼らは現在、効果的かつ即時的な司法審査を受ける権利を保証しないバージョンを考慮している。
海賊党議員であるクリスチャン・エングストロームは、彼のブログでこの改正案についてコメントしている。彼は、欧州議会の3人の交渉者と理事会代表らとの会合において、火曜日以降、変化を続ける文書について記している(ボールドは追加された箇所、打ち消し線は削除された箇所)。
こうした変化により、司法手続きの保証(いかなる手段も公正な手続きを経て行われるべきである)が削除され(現在はそうしたものを『尊重』すべきであるという程度にとどまっている)、ACTAの『国家安全保障』条項のような含意が含まれた。
彼はこれについて以下のように簡単に要約している。「議会のの提案すべてを無視するという議会に対する全くの侮蔑である。理事会は議会を迂回しようとしており、これを最後に決定を下すのは彼らであることを証明しようとしているのだ。」
一方、フランスの最高法権威である憲法院は、わずかに修正が加えられたHADOPIを承認した。9月に却下された当初は、切断措置を下すに当たっては(HADOPI機関ではなく)裁判官の判断が必要であり、それは法廷に委ねられなければならないとされた。しかし、修正案における司法手続きは、『fast tracked(即決)』のものとされ、完全な司法手続きが与えられるわけではない。ニューヨークタイムズ紙はこれを『交通違反と同様』であるとした。
これは多くの人を、(もちろん)海賊党を怒らせることになった。フランス海賊党および国際海賊党のLaurent Le Besneraisはこれを「インターネットの自由に対する大きな打撃」であるとした。
「2009年6月、まさにこの理事会がインターネットアクセスは基本的権利であり、司法手続きなくしては制限することができないと明言したはずです。」と彼はTorrentFreakに語る。「そして本日、その理事会が、裁判官に違法共有を疑われたすべての人々のインターネットアクセスを切断する権利と責任とを与えたのです。もっといえば、容疑をかけられた個人は、自らの無罪を自ら証明しなくてはならないというのです。それは推定有罪に他ならなりません。」
これらの対策は方向転換を繰り返しているが、今後の選挙において欧州各地の海賊党の支持を大きく後押しする結果に終わるだけだろう。しかし、同党の活動や支持の呼びかけは主にオンラインで行われていることから、メンバーらのネット回線が切断され始めるリスクも存在する。証拠となる基準が極めて低いことからも、政治的な批判者に対し、その反対勢力の権力によって、最終的に回線を切断させられてしまう可能性は、ただの思い込みに過ぎないのだろうか?
すべてが予定通りに進めば、HADOPI機関は来月には職員を配置し、来年から警告上の送付を始め、そして来夏には切断が始まることになっている。この法律が無実の人々を罰し始めるまでにどれくらいの期間を要するのかを予測するのは難しい。IPREDよろしく、この法律のターゲットとされる人々は、自宅の回線を使うことをやめ、シードボックスやVPN、オープンWifiホットスポットを使うようになるだけだろう。
フランス憲法院のHADOPI第2案への判断については、無名の一知財政策ウォッチャーの独言さんにて翻訳、解説されているので、関心のある方は必読。
■第195回:フランスの3ストライク法案の第2案に対する憲法裁判所の判決: 無名の一知財政策ウォッチャーの独言
以下の記事では、フランスのHADOPI成立前後のスリーストライク法案を巡る欧州の動きについて、非常に幅広く伝えている。ライターは末岡洋子さん。私の大好きなライターさんです。こちらは、様々な背景やいきさつ、派生にも触れているので、翻訳した上記の記事よりも網羅的な内容となっているかも。こちらも必読。
■【コラム】欧州から眺めるITトレンド (36) フランスで違法ダウンロード対策法"Hadopi 2"が成立 | 経営 | マイコミジャーナル
英国版スリーストライク法の導入については、先日、ITMediaでもロイターの翻訳記事が掲載されているので、こちらも是非。
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