欧州:録音物の著作権保護期間延長、実現にまた一歩前進

以下の文章は、TorrentFreakの「Music Copyright ‘Pension Extension’ Moves Forward」という記事を翻訳したものである。

原典:TorrentFreak
原題:Music Copyright ‘Pension Extension’ Moves Forward
著者:Ben Jones
日付:Febrary 13 , 2009
ライセンス:CC by-sa

欧州にて、録音物の著作権(訳注:実演家の権利/日本では著作隣接権の一部)保護期間を50年から95年へと延長せんとする動きは、法務委員会を経由することで、その実現へとまた一歩近づいた。こうしたアクションは、表向きはセッションミュージシャンに年金を与えるため、とされているが、実際には4大メジャーレコードレーベルがたなぼたで数百万ユーロをカスめとろうというだけの話である。

現在、著作権に関連した『ホットなトピック』といえば、来るThe Pirate Bayの訴訟であることは疑いない。『これからの10年を決める政治的裁判』とも呼ばれるこの訴訟は、非常に多くのニュースサイトによってカバーされた。もちろん、それはここTorrentFreakも例外ではない。こうしたトピックへとメディアのフォーカスが釘付けになっているのに乗じて、EUは抜き打ちで何かを滑り込ませようとしているようだ。

欧州議会 法務委員会は、録音物の著作権保護期間を延長するという決議案を承認した。これは来月3月に全体投票が行われることになっている。

これまで、延長に対する反対意見は非常に多かった。先月、Open Rights Group(ORG)が学者や欧州議員ら(その中には少なくとも1人の法務委員が含まれていた)との円卓会議を開催し、また昨年には、有力新聞紙上にて、この提案に対する強烈な批判が掲載された。

McCreevy委員が謳っているところでは、この提案の主な『利益』は、セッションミュージシャンやそれに類する人たちのためのものである、とされているが、委員会が徴収団体に権限を与えるという修正を加えたことで、その根拠は非常に脆弱なものとなっている。もちろん、これはアーティスト自身がお金を受け取る資格を有することを証明できることを前提としている。ベテランプロデューサー/ミュージシャンのMile Collinsは、ORG円卓会議でのスピーチにて、セッションミュージシャンの参加記録は、最近まで一般的ではなかった。

さらにひどいことに、現在、委員会によって、ビデオパフォーマンスの保護期間延長に関する影響分析を行うための調査が求められている(訳注:オーディオヴィジュアルでも同様の保護期間延長が求められているということ。)。この調査の結果は、メジャーコンテンツ製作者以外にはほとんど利益をもたらさないことが示されるだろうことは疑いないのだが、それは無視され(今回のケースでも同様のことを指摘する調査もあったが、それは無視された)、提案は進められるだろう。

しかし、僅かながら望みもある。この提案では、3年後にアーティストを取り巻く社会的状況を評価することが求められており、その後も4年ごとにどの程度改善したのかが評価される。このことは、この対象に対する更なる延長を抑制するものとなるのかもしれない。さらに、保護期間が延長されてもアーティストの利益には変化がないということになれば、再び保護期間を元に戻すということを促すことにも繋がるだろう。それでも、彼らが更なる保護期間の延長を求める可能性はあるのだが…。

毎度のことながら、保護期間の延長議論は釈然としない。

ORGのこのビデオでは、結局、保護期間の延長で新たに得られた利益は、90%がレコードレーベルに、9%がトップ20のミュージシャンに、残りの1%がボトムの80%のミュージシャンに分配されるだけ、なんていわれている(この部分についての詳細はこちらのエントリにて)。そもそもは、このボトムの80%の中でも、この延長がなされないと生活に困窮する人たちが出てくるんだ!なんて主張が、延長の根拠にされていたような気がするのだけれどもね。

一応、レーベルの側が(ロイヤルティ徴収団体を介する)ファンドを作って、保護期間の延長によってあげられる収益の20%をセッションミュージシャンに分配するとのことであるが、それでも残りの80%はレーベルの利益になるわけだ。

さらに、上記記事でも「ベテランプロデューサー/ミュージシャンのMile Collinsは、ORG円卓会議でのスピーチにて、セッションミュージシャンの参加記録は、最近まで一般的ではなかった」としてるように、50年も前のセッションミュージシャンの参加記録をどのていど保管しているのかも重要な点だろう。結局、延長はして利益を増やしたはいいが、受け取るべき人々が受け取れないのでは全く意味がない。

断言してもいいが、これは単純にアーティストをダシにしたレコード産業の既得権益拡大に他ならない。彼らは「困窮するセッションミュージシャン像」を作り出し、「その彼らのための保護期間の延長である」ことを演出し、「最も恩恵を受けるのはレコード産業である」ことをひた隠しにする。

最後に、ORGのBecky Hoggeが欧州議会、音楽著作権カンファレンスにて行ったスピーチのビデオを。


Becky Hogge: Speech at Sound Copyright conference in the EU Parliament 27.01.09 from Open Rights Group on Vimeo

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