WinMXとかWinnyとか、日本ではろくな扱いを受けていないP2Pですが、海外ではけっこう真面目に議論されてるんですよというブログ。
以下の文章は、TorrentFreakの「FrostWire P2P Client Starts Artist Promotion」という記事を翻訳したものである。
原典:TorrentFreak
原題:FrostWire P2P Client Starts Artist Promotion
著者:Ben Jones
日付:December 10, 2008
ライセンス:CC
by-sa
しばしば、P2Pクライアントは『人々が泥棒をするのを手助けしている』として批判されるが、しかし実際にはまだ未知のアーティストのプロモーションに役立っている。これはまさにFrostWireがFrostClickという新たなサービスで達成しようとしたことでもある。その初のフィーチャーアーティストは、そのプロモーションで多くの注目を集めた。
お金を儲けたいというアーティストへの最も一般的なアドバイスの1つに、フリーサンプラーで楽曲を配布し、コンサートやフィジカルボーナスをつけたCDなどの付加価値サービスでお金を稼ぐというものがある。これは既に人気を確立したNine Inch NailsやRadioheadといったアーティストにとっては現実的なビジネスモデルとなろうものだが、まだまだ知名度の低い、または出始めのアーティストには、こうした大きなバズを生み出すということは非常に困難であろう。
そうしたアーティストたちはJamendoやLast.fmといったサイトへ向かう。しばしば、これらのサイトは関係性を働かせる。『これが好き?ならこれも好きだと思うけど…』といったように。確かにそれによって幾人かの新たなファンを獲得することができるだろう。しかし、ピアツーピアクライアントそれ自身が、アーティストを直接プロモーションするということはほとんどなかった。まさにそれをFrostWireが開始したのである。
FrostWireのWelcomeスクリーンを通じて、FrostWireユーザはSean Founierの6曲入りのアルバム『Oh My』をBitTorrent経由で提供された。さらに、利便性を高めるためのストリーミングバージョンも利用できたため、Torrentを使ってダウンロードすることなく試聴することができた。ここでキーとなるのは、簡単さである。ワンクリックで楽曲は再生され、さらにもうワンクリックでアルバムのTorrentが読み込まれ、楽曲がダウンロードされる。
FrostWire Promoting Sean Fournier
さて、皆さんが最初に思いつく疑問はこうだろう。それは成功したの?と。FrostClickサイトによれば、最初のウィークエンドには25,000回以上ダウンロードされたという。そして現在、32,000回以上ダウンロードされており、BitTorrent経由で転送されたデータの総量は1テラバイトにも及ぶ。現在では、このプロモーションは終了し、(FrostWireユーザの)Torrentの知識とリーチが限られているにもかかわらず、依然としてその数は増加を続けている(訳注:つまり、プロモーションの効果が広まっているということ?)。
ここ数年のピアツーピアソフトウェアに関わる判決では、P2Pソフトウェア企業はマドンナやメタリカなどのMP3を交換するための最高のネットワークを構築せんとしてきたと指摘されている。しかし、彼らは積極的に『大規模な非侵害的な利用』を促進してきた。それは、同社に若干の帯域コスト(サンプルトラックのストリーミングなど)をかけるだろうが、そのコストは、ユーザの侵害の身代わりとして長期の裁判を引き受けるのに比べれば僅かなものだろう。また、こうした好意はすばらしいボーナスをも生む。積極的にこれからのアーティストをプロモーションするP2Pクライアントとなれば、良いパブリシティーも得られるだろう。
アーティストにとって、FrostClickは数百万の音楽ファンにリーチするユニークなチャンスである。Seanはこのキャンペーンの結果に感動し、彼のブログにこう記している。「FrostClick/FrostWireのおかげでものすごい数のダウンロードがあった。だから、これに関わった全ての人にお礼を言いたくて。僕が全てのサポートに感謝してるってことを伝えたい。これは本当にすごいんだ!」
FrostClickのKademliaはTorrentFreakに対し、契約に漕ぎ着けた人々をプロモートしたいと話している。「我々は、合法的な選択肢を、そしてすばらしいメディアを、我々のユーザにフリーで提供してくれるプロフェッショナルなインディペンデントコンテンツクリエイターを探しています。FrostClickは現在、Audra Hardtをプロモーションしていますが、ここでは他の複数のアーティストに対しても無料のプロモーションサービスを展開しています。」
お断り:FrostWireは我々の『スポンサー』の1つである。しかし、本記事は自由意志によって書かれたものであり、いかなるスポンサーシップとも独立している。
一応、1ヶ月ほど前の記事です。日本でもFrostWireユーザがこのアルバムに反応するかな、と思っていたのだけれど、日本だとLimeWireかCabosユーザばかりなせいか話題にはならなかった…。残念。
それはともかくとして、こうしたプロモーションは面白いなぁと思う。ただ、その数百万のFrostWireユーザが向いているのはこうしたこれからのアーティストというわけではなく、現在既に人気を確立しているアーティスト/プロダクションのコンテンツである、ということを考えると、どうしても海賊行為をベースにしたプロモーションとも思える。もちろん、ここで登場してきたSean Fournierがそれを利用しているとかいうわけではなくてね。
少なくとも、(結果的に)著作権侵害を行なうことを目的とした人々が、こうしたプロモーションによってアーティストを知る、という状況から、音楽コンテンツを合法的に入手することを望む人たちが集まることで、こうしたプロモーションが効果を持つ、という状況へとスライドしていかない限りは、あくまでも建前的な『プロモーション』とも取れてしまう。もちろん、こうしたチャンスは利用すべきだと思うけれど、ただ、こうしたやり方は薄氷の上で行なわれていることも知らないといけないかなと。
余談だけれど、このSean Founierのアルバム、すごくいい曲ばかりなので、是非とも聞いて下さいな。ジャンルはAcoustic/Folk Rock /Pop。確かに最初のフィーチャーアーティストに選ばれるだけのことはある。試聴、ダウンロードは(Jamendo/公式サイト)にて。公式サイトも自前で制作しているらしいのだけれど、その割には、かなりかっちょいいのですが…。ちなみにアートワークも自前だとか。
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